米国のスタートアップ企業Inertiaは、レーザー慣性核融合の商用化を加速させるため、4億5000万ドル(約675億円)の資金を調達した。この資金は、核融合反応からクリーンなエネルギーを生成できる実証設備の建設に充てられる予定だ。
今回の資金調達により、プロジェクトは基礎研究の段階から、商用システムのプロトタイプ開発へと移行することになる。これまでの慣性核融合の取り組みは、2022年に初めてQ値(エネルギー増倍率)1超えを達成した国立点火施設(NIF)のような研究施設に限定されていた。Inertiaは、発電所として稼働可能な条件下で、安定したエネルギー出力を実現する計画を掲げている。
もっとも、得られた成果と実際の発電所の間には、依然として大きな隔たりがある。数ヘルツ単位でのレーザーの繰り返し照射や、中性子負荷に耐えうる材料の開発、そしてシステム全体のコストを他の電源と競合できるレベルまで下げることが不可欠だ。これらの課題が解決されない限り、今回の資金調達もあくまで初期段階の開発投資に留まるだろう。
この手法の根幹は、強力なレーザーパルスで燃料ターゲットを圧縮し、核融合反応を誘発することにある。このプロセスは内燃機関の仕組みに例えることができる。レーザーの一発一発が点火にあたり、エンジニアの課題は、その断続的な点火をいかに連続的な稼働へと変えるかにある。
調達した資金によってプロトタイプ完成までの期間は数年短縮される可能性があるが、技術的な根本障壁が消えるわけではない。繰り返し照射や材料の問題が首尾よく解決されたとしても、実際に送電網に接続されるまでには、少なくとも10年はかかると多くの専門家は見ている。
今後のInertiaの進展を評価する際は、投資額の規模ではなく、パルス頻度や一回あたりの照射コストといった具体的な指標に注目すべきだろう。



