2026年6月、米大統領は2025年度の所得報告を行ったが、その申告書に記された数字に、多くの者が二度見を余儀なくされた。政府倫理局(OGE)に提出された財務報告書によると、トランプ一家は暗号資産関連プロジェクトから12億ドルを超える収入を得ている。その大半は、World Liberty Financialのトークン販売とミームコイン「$TRUMP」によるものだ。
これはビットコインへの受動的な投資ではなく、新たなデジタル資産の創出とプロモーションに直接関与した結果である。息子たちと共同設立したWorld Liberty Financial社は8億ドル近い収益をもたらし、そのうち5億2000万ドル以上がトークン販売による利益であった。さらに、個人のミームコインからも約6億3500万ドルが流入している。これらの数字は、まさに現政権が暗号資産市場にとって有利な規制を積極的に推し進めていた時期に記録されたものだ。
ここには、ルールの決定権を持つ者が同時にその資産の大部分を保有するという、古典的な構図が見て取れる。デジタル通貨に関する政策は、大統領一家が保有するトークンの価値に直結する。投資家やホルダーはこれを一つのシグナルと見なし、所有者側は市場の成長と政治的資本の両面から二重の利益を享受することになる。
こうしたモデルは決して新しいものではない。古代ローマにおいても、元老院議員が自ら法律を制定する属州に投資することは常態化していた。今日では土地がトークンに、属州が取引所やプロトコルに置き換わったに過ぎない。唯一の違いはそのスピードにあり、暗号資産市場は政治的な決断を数十年ではなく、わずか数ヶ月で数十億ドルの富へと変えることを可能にしている。
一般の投資家にとって、ここから得られる教訓は明白である。公人が規制者であると同時に最大の受益者でもある場合、資産価格はもはや技術や需要だけで決まるものではなくなる。それは政治的な保護への期待値を反映し始めるのである。このような状況下では、いかに有望なプロジェクトであっても、ルールを作る側に富を再分配するための道具と化すリスクを孕んでいる。
トランプ氏の所得申告書は単なる収支報告ではなく、政治と資本がかつてないほど密接に絡み合う世界において、「いくらか」を問う前に「誰が得をするのか」を問うべきであることを我々に再認識させている。


