NASAの火星探査機が捉えた高解像度画像から、火星のノアキス・テラ地域に、かつて川が存在したことを示す痕跡が発見されました。その長さは約16,000キロメートルにも及びます。この発見は、これまで考えられていた以上に、火星がかつて湿潤な気候であった可能性を示唆しています。
研究チームは、かつて水が流れていたことを示す蛇行した地形(河床)を特定しました。これらの地形は、古代の川が運んだ堆積物が、周囲の柔らかい地盤が浸食されることで現れたものです。幅数百メートル、長さ数キロメートルの小さなものから、さらに大規模なものまで、様々な規模の河床が確認されています。
チームの一員であるロスコート氏は、この発見が非常に驚くべきものであると述べています。彼は、水が存在しただけでなく、広範囲にわたって分布していたことを示唆していると指摘しています。ロスコート氏によれば、これほど広大な河川ネットワークに水を供給するためには、地域規模での降雨または降雪が必要だったと考えられます。
画像には、二つの川がクレーターに流れ込み、そこから溢れ出ている様子が捉えられており、持続的な水の流れがあったことを示唆しています。これらの痕跡は、約37億年前の火星が、現在よりもずっと温暖で湿潤な気候であったことを示しています。これは、水の流れだけでなく、惑星の表面に大規模な水塊が存在していた可能性を示唆しています。
火星の磁場が弱まり、大気が薄くなったことで、地表の水は蒸発し、宇宙空間へと散逸しました。しかし、現在でも、一部の水は地中に隠されたまま残っている可能性があります。今年4月には、火星の地表深くに巨大な水の貯留層が存在する可能性を示す研究も発表されました。今回の発見は、火星の過去の気候と水に関する理解を深め、今後の探査にとって重要な手がかりとなるでしょう。この発見は、日本の宇宙開発にとっても、大きな示唆を与えるものです。今後の探査計画、特に有人火星探査などにおいても、今回の知見が活かされることを期待します。