2024年、世界の富裕層が増加し、経済格差が拡大しています。スイス銀行UBSの報告によれば、過去10年間で世界のビリオネアの資産総額は6兆3,000億米ドルから14兆米ドルへと増加し、ビリオネアの数も1,757人から2,682人に増加しました。特に北米では、産業およびハイテク分野のビリオネア主導の資産増加が顕著で、2024年には世界中のビリオネアの資産の40％以上を占めています。テクノロジー業界では、生成型AIブームなどにより、資産が2015年の7,889億米ドルから2024年には2.4兆米ドルへと増加しています。このような資産増加は、企業統治や独占により、巨大企業およびその主要株主やCEOとなっているビリオネアの権力をさらに増大させています。
一方、2020年以降、世界人口の約60％が貧困化し、25年ぶりにグローバルサウスとグローバルノースの間で格差が拡大しています。巨大企業の利益は株主と企業所有者に集中し、消費者は価格上昇に、労働者は賃金の停滞に直面しています。国際NGOのオックスファムの調査によると、調査対象の164か国の中で少なくとも90％が、法人税率の低下など経済格差を拡大させる可能性のある政策や行動を実施しています。このような状況は、拡大する極端な不平等が新たに常態化することへの懸念を引き起こしています。
さらに、国際通貨基金（IMF）の報告によれば、低成長の世界経済は不平等と不安定をもたらす可能性があり、バランスの取れた政策が必要とされています。IMFの最新の「世界経済見通し（WEO）改訂版」で示されているとおり、世界経済の成長率は今年は3.2％、2025年は3.3％になると見られており、今世紀に入ってからパンデミックまでの平均である3.8％を大きく下回っています。このような低成長が長期間続くと、貧困や格差との闘いが大きな打撃を受ける可能性があります。
このような状況を受け、主要20か国・地域（G20）は、デジタル課税の実現促進や超富裕層の個人に対する課税強化などの政策を採択しています。これらの政策は、世界経済の停滞と格差拡大に対する危機感を共有した結果として導入されました。しかし、その実効性は世界最大の経済大国である米国が左右するため、今後の動向が注目されます。
総じて、2024年の富裕層増加と経済格差の拡大は、世界経済の安定性と持続可能な成長に対する新たな課題を浮き彫りにしています。これらの課題に対処するためには、国際的な協力と効果的な政策の実施が不可欠です。